2024年露地栽培ブドウの生育状況


「晴天に恵まれ、例年以上の甘さでおいしいブドウになっています。」というような文言が毎年どこかの記事で見かけます。必ずと言ってよいほど目にします。本当でしょうか?言葉は悪いのですが、素人をだますには常套句とも言えます。

いきなり厳しい内容を書きましたが、ワイン用ブドウ、特に雨よけなどの設備のない露地栽培を行っているブドウ農家から現状をお知らせいたします。一般的な話ではないかもしれませんので、限定的にとらえていただければ幸いです。

2021年を基準にするとワイン用露地栽培葡萄の収量は確実に落ちています。以下のような現象が生じています。

  • ブドウの房が小さくなっている
  • 同じ品種でも、畑の中心部にあるブドウほど傷み具合が早い
  • 高温の日が続くと傷み具合は日に日に進み、赤ぶくれ状態を呈し、酢酸臭が漂い、すでに酢酸発酵が生じている
  • 黒ブドウの粒に、大きさは房平均と同じような大きさとなっているものの、黒くならず青いまま残る
  • 葉の陰に隠れた房は比較的健全な状態を維持しているものの、糖度は上がらない
  • 除葉した箇所は、3)の赤ぶくれかレーズン化する確率が高い
  • 梗の一部が黒くなり、その先の粒はレーズン化していく

 

これらの条件は単発で確認できる場合も複合的に確認できる場合もあります。ブドウ特有の晩腐病を併発している場合も有り、最終的な収量は落ちることになります。

限りあるマンパワーで収穫・選果を実施しているので、収穫時期が狭まるとブドウの劣化に追いつかないという現象が生じます。これも収量が減少する要因となります。近年の高温化に対して有効な手立てを施し、毎年変わらない収量を上げている栽培農家さんも存在すると思いますが、露地栽培ではかなり困難と考えます。

具体的なデータを提示することができませんが、日本だけではなく世界的な傾向となっているようです。露地栽培では高温の温度を下げる方法は風を強制的に送る程度のことが考えられますが、基本は有効な対応策とはなりません。日差しに関しては遮光ネットなどでの対応も可能です。高まる気温、日射時間の長さ、少雨ながら降れば線状降水帯という極端な気象条件に対応する術を知恵を使っていくしかないというのが現状です。「晴天に恵まれ、例年以上の甘さでおいしいブドウになっています。」という表現は私にはできません。

投稿者: 高橋 学

2024年露地栽培ブドウの生育状況」に1件のコメントがあります

    富山桂一

    (2024年9月15日 - 6:05 PM)

    現実を直視したお言葉、ありがとうございます。ロゴスチックに言えば、栽培法、品種改良などめざすべきことはたくさんあると思います。が、厳しい環境の中で生まれているぶどうとワインを愛おしく思うマインドは持ち続けたいと、思い直すことができました。

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