電気探査による地下水の把握


1月27日土曜日に第1農場に見慣れないメンバーが集合していました。日大理工学部の教授と学生そして大手ゼネコンの研究所職員という陣容です。電気探査とは地下に電極を通して電気を流して、地下の比抵抗分布を測定する技術ですが、ブドウ畑に適用した前例は恐らくないでしょう。単純には水は電気を通しやすく、土や砂は電気を通しづらいという物理概念から、比抵抗の差異をもとに相対的な比較が可能になると考えたほうが良いでしょう。比抵抗が低いと水あるいは水分が多いことを示し、比抵抗が高いと水分が少ない状態を示しています。基本的には同じような地盤(堆積層で砂層か粘土層かの違い)を対象とする場合には、水分の大小で比抵抗の違いを解釈することができます。ただし、測定した比抵抗の分解能が十分な場合についてですが。

電気探査に必要な道具一式(写真1)、

写真1

電極の側線配置を検討する本日のメンバー(写真2)、

写真2

そして2m間隔で南北に配置した側線(写真3)、

写真3

ロガーによるデータ収録状況を確認するメンバー(写真4)です。

写真4

解析は手前のパソコンで専用ソフトを用いて得られたデータから地盤の元の状況を推定する逆解析手法によって行われ、精度向上のためにこの逆解析を10回繰り返して実施しています。
さて、測定結果ですが

このような結果を得ました。暖色系が比抵抗値が高い、すなわち水分もしくは空隙が少ない領域を示しています。一般的には岩石の比抵抗は飽和度(岩石の空隙内に占める水分の割合)が高いほど比抵抗は低くなります。また、空隙率が大きくなると比抵抗は低くなります。今回の実験結果から言えることは、ほぼ地表面に沿って地表から深さ方向に比抵抗が高くなっていること、図の右側(南方向)に比抵抗の高い領域が地表に出現していることです。残念ながら地下水の分布に言及できるだけの情報は無いといえます。中央部にある深度11mレベルの高比抵抗ゾーンの持つ意味は現時点では不明です。また、図の中央部深度24m以深のデータに関する信頼性は低いものの十分な水量を蓄えた砂層の存在を伺わせている可能性は高いと判断しています。このようなデータの解釈は絶対値ではなく、相対的な差が優位であることに留意する必要があります。

実はこの地域の地下地質や水理地質構造は既に分かっており、電気探査の結果はこれらのデータとの整合性が一部示されているとも解釈できます。地表から8~12mもしくは20m以深には砂層が分布していることがボーリングデータからも判明していました。図の右側が南で左側が北です。今までは地上のブドウの生育状況を調べていたのですが、そこには土壌の構成、砂が多いか少ないかという土壌の細かな性質がブドウの生育に関与していることが推定されていました。この側線における南北間の高低差は1.5m程度あり、南側に緩やかに傾斜している構造ですが、比抵抗の分布図で右側(南)32.0mにある高比抵抗は3.5~5m深度にある浅い、しかも水分がすでに蒸発してしまった砂層の存在を示していると解釈することができます。季節ごとの変動や降雨直後の計測など同じ条件下における計測結果との比較からより確かなことが確認できると考えられます。

ブドウの生育に直接関与しないのではと思われる地質や地下水構造ですが、どうも影響を及ぼしていることが今回の電気探査結果からも推定することができます。

仕事の合間に昼食を楽しむ本日の参加者の皆さんでした(写真5)。

写真5

投稿者: Tsukuba Vineyard

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